戦後間もない1951年に誕生したダイハツ初の乗用車「BEE」。小さな三輪乗用車ながら、
独創的な構造と時代を切り拓いた挑戦の象徴として今も人々を魅了し続ける存在・・・
長い時を経て再び人の縁で巡り合い、当時の姿のまま大切に受け継がれるその1台を通して、
モノづくりに宿る想いとつながりの力を探った。(イラスト:田中むねよし氏)
一本の連絡から始まった出会い
ダイハツ探検隊!です 。よろしくお願いします。
はじめまして、ダイハツ探検隊!です。これまでもダイハツ歴史探検隊(自称)として記事を発信してきたが、今回は社内で募集した探検隊員による記事をご紹介!
私たちの探検活動の初回テーマを何にするか思案していた頃、ダイハツの樹脂部品を扱っていただいている河村化工株式会社の河村会長から一本の連絡があった。
内容は「是非、お見せしたいクルマがある」というものだった。
そのクルマこそ、ダイハツの歴史を語るうえで欠かせない1台「ダイハツBEE」である。
心に残っていた1台のクルマ「BEE」
さっそく河村会長に取材を申し込み、経緯を伺った。
河村会長がダイハツ社員だったころ、ダイハツ本社前で見た三輪乗用車「BEE」に強い印象を抱いたという。それは「いつかまた会いたい」と思うほど心に残った一台であった。
それがなんと長い年月を経て、そのBEEを実際に手に入れる機会が訪れた。
きっかけは河村会長の知り合いからの紹介で、三重県で自前の博物館をされていた山下さんとの出会いだ。
ボロボロに朽ち果てていたBEEをコツコツと手入れをしながらレストアされた方だった。
実際に河村会長が現地まで赴き、熱く語り合った結果、山下さんから「BEEの譲渡先を探していた。そんなに惚れ込んだ車なら譲りましょう」との提案があった。
二つ返事で了承されたクルマ、これが今回取材したBEEである。
そもそもBEEってどんなクルマ?
BEEは、戦後間もない1951年10月(同年にサンフランシスコ平和条約が調印)に生産された、ダイハツ初の乗用車である。物資が不足していた時代に誕生したこのクルマは、当時のダイハツが持っていた“チャレンジ精神”そのものを体現した一台だ。
<スペック>
・三輪乗用車
・エンジン:800cc 4サイクル2気筒水平対向型、強制空冷式 18PS
・変速機 前進3段 後進1段
・操舵装置 独特の指示方法 丸ハンドル
・後輪支持 独立懸架 トーションバー使用
・定員:4名
・最高速度:80km/h
・全長:4080mm 全幅:1480mm 全高:1440mm
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<BEEの内装>
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ステアリングホイールは細身で、当時らしい握り心地。
後部座席には手回し式のレギュレーターハンドルが残っており、当時の乗用車の雰囲気を色濃く感じる。
※以下4枚、画像をクリックすると、大きな画像が表示されます
BEEは日本で初めて水平対向エンジンを搭載した乗用車。後部にエンジン・変速機・差動歯車室を直結して配置し、さらに当時では珍しいトーションバー式サスペンションを採用するなど先進的な構造が特徴である。開発当時は文献も乏しく、海外帰りの人から借りた、一般カタログを参考に外観を検討するなど独創的開発であった。
BEEの名称は、社内公募によって決定され、名前の通り蜜蜂を思わせる愛らしいスタイリングが特徴だ。
元々は自家用車として販売されていたが、販売店から「タクシー需要もある」との声もあり、タクシーとしても使用。一般ユーザーには好評だったものの、タクシー用途では改良点も多く、当時の会社として大量生産の体制を整えることが難しかったことから、惜しまれながらも1952年に生産終了。
しかし、モダンなデザインと機能性から一般ユーザーの支持は厚く、生産が終わった後も数年間は町中で走る姿が見られたと記録されている。
(社史「創立60周年を迎えて 躍進するダイハツ」「「燃えて 駆けて ダイハツ80年のあゆみ」」より)
生産台数の少なさから、現存個体はわずか3台のみと言われている。
そのうち1台はダイハツが保有。
<ダイハツ保有のBEEの写真>
ちなみに・・・
某テレビ番組の鑑定では600万円の評価がついたこともあり、その希少価値は年々高まっている。
受け継がれる想い
BEEが日本一周?!!!
河村化工が所有するBEEについて調査を進める中で、外板の独特な塗装デザインに着目した。
社内資料を調査してみると、興味深い事実が・・・
この個体は、ダイハツが三輪自動車10万台生産を記念して日本一周キャラバンを行った際、隊列の先導車を務めていた個体だ。
各地でキャラバンを迎えてくれる方々の先頭を走っていたのはこのBEEだったのである
手を加えず「レストア時の日本一周のカラーリング」のまま
全国行脚の画像と比較すると、河村化工所有のBEEは当時のカラーリングを再現している。これはレストアする際に “日本一周の歴史を残す”という意思が込められた選択だ。
BEEには、開発に携わった人々の挑戦心や、その後のオーナーが大切に受け継いできた想いが詰まっている。こうした背景を踏まえると、現存する個体は単なる“古い車”ではなく、ダイハツの歴史そのものが宿る貴重な文化資産といえる。
<全国行脚のBEEと現在の河村化工所有のBEEの比較画像>
縁が紡ぐ価値を未来へ
BEEは単なる希少車ではない。
「人がつなぎ、時代がつなぎ、想いがつないできた縁のクルマ」だ。
河村会長は語る。
「モノづくりも仕事も、最後は“人とのつながり”が支えている。その価値を感じてほしい。」
今回BEEを取材し、ただの貴重なクルマではなくて“人のつながりが守ってきたクルマ”と実感。歴代オーナーの想いを知るほど、モノづくりって技術だけじゃなく、人がつないでいくものと感じた。
ダイハツ探検隊!も、その精神を胸にリアルな探索を続けていく。
次回の記事もこうご期待!!
■付録1 カタログ
■付録2 ダイハツ製三輪自動車10万台記念記録映像(ショート版 約6分 ※音声なし)
■付録3 ダイハツ製三輪自動車10万台記念記録映像(ノーカット版 約30分 ※音声なし)
以上、ダイハツ探検隊!がお送りしました~
この記事の登場人物

河村化工株式会社 会長
河村さん

ダイハツ探検隊隊長
岩村さん(ブランド推進室)

ダイハツ探検隊員
藤原さん(TAR生技部)

ダイハツ探検隊員
川北さん(総務室)

ダイハツ探検隊員
齋藤さん(VC事業部)

ダイハツ探検隊員
若林さん(車両開発部)

ダイハツ探検隊員
江間さん(流通企画部)

ダイハツ探検隊員
田中さん(ユニット生技部)

ダイハツ探検隊員
石田さん(コーポレート企画室)